東銀座と私/のだくみこ(前篇)

東銀座と私/のだくみこ(前篇)

2023.07.28
東銀座と私
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今と昔を結ぶまち、東銀座。まちや風景は変わってもそこで過ごした時間やかけがえのない経験はいつまでも心に残り続ける―
東銀座にゆかりのある方々に東銀座や銀座、築地などを含め、このエリアで過ごした想い出やこれから期待することなどを文や絵など形態にとらわれず、前篇・後篇として2回にわたり自由に綴っていただくエッセー企画「東銀座と私」。
その第3弾となる今回は、東銀座・築地のまちに惚れ込み、地域のお店のサポートや観光客に向けてオリジナルのツアーを行うなど、まちの魅力を発信しているTsukiji遊花楽(ゆうから)・のだくみこさんにご寄稿いただきました。まずは、前篇をお届けします。

はじめまして。築地・和ごころコンシェルジュのだくみこです。2023年3月、大好きな築地のまちのStoryを書いた書籍『築地スタイル』を出版しました。築地在住11年になりますが、その前4年ほど住んでいたのは銀座一丁目、最寄り駅は東銀座でした。とても住み心地がよく、次に住むのも近所がいい、と探して出会えたのが隣駅築地の物件!まさにこのエリアは自分の人生を変えてくれた大好きなまちです。

銀座に住んだのは「一度切りの人生なら、銀座に住んでみたい!」という好奇心から。もともと埼玉県郊外の田舎育ちの私にとって、銀座は日本一が集まる憧れの場所でした。幼いころから母がよく「銀ブラ」に連れていってくれたのも思い出です。仕事で多忙を極めた頃、会社に自転車で通える場所を探したら「銀座に住む」という選択肢が出てきたのは運命のお導きでした。

「銀座って住むところあるの?」とよく聞かれますが、銀座の中心部から昭和通りを超えるとマンションも多く、路地裏には昔ながら下町風情が残っています。夜でも街頭が明るく治安がよいのも安心ポイント。銀座四丁目の表の華やかな賑わいとはまた違う、裏庭のような、ほっこりする独特の雰囲気があるのが東銀座の魅力です。

東銀座の好きな風景:歌舞伎座 屋上庭園
歌舞伎座タワー5階「寿月堂 銀座 歌舞伎座店」からの眺め。
お茶を一服いただきながら、歌舞伎座に想いを馳せます。

住んでみて唯一困ったのは、スーパーマーケットがないこと。そんな時に出会ったのが「ナチュラル・ハーモニー」という自然栽培の食材や素材を扱うお店でした。大地の恵みを受けて育った無農薬の野菜の美味しさに気づき、味噌づくりワークショップなどを通して、「命をいただく」食への関心、感謝が生まれました。
(今は東銀座から移転されてお店はありませんが・・・)

もう一つは「AIN SOPH. GINZA」。2019年12月、歌舞伎座裏にオープンするタイミングで、オーナーの白井由紀さんに出会い、「本来の自分に戻る場所」というコンセプトに痺れました。初めてヴィーガン料理というジャンルを知り、食事の取り方で心も体も整えられることを知りました。AIN SOPH. の料理を食べると心がふんわりやわらかくなり「食べることは生きること」「内側から自分を愛する」ことの大切さに気付かせてくれた、人生最高のレストランの一つです。

つい先日も訪れた「AIN SOPH. GINZA」店内にて

東銀座は、このように食にこだわる個性豊かでセンスのよいお店が多く、「こんなお店があった!」と日々発見があるのが楽しいまちです。老舗の「木挽町よしや」のどら焼きを予約なしで買えた日はラッキー!「樹の花」ではジョンとヨーコに想いを馳せながら読書(※1)。ランチは「銀座うち山」を予約して鯛茶漬け、夜は「パリのワイン食堂」でカジュアルにフレンチとワインを。「ふくよし」の稲荷寿司(こいなり)はお持たせに…と東銀座は、どこか小粋で、食通が通うお店がたくさんあります。


ここは昔、「木挽町」と呼ばれたエリア(※2)。江戸時代には多くの人で賑わい、芝居小屋や見世物小屋が集まったといいます。東銀座のシンボルといえば、今も歌舞伎座、新橋演舞場。日本の芸能文化、エンターテイメントの聖地です。江戸時代の歌舞伎は物見遊山の一大イベントで、幕内弁当やそばなど、舞台の合間に美味しいものを食べるのも遠足のお楽しみだったことから、歌舞伎座周辺、木挽町の飲食店は切磋琢磨することで、レベルが上がってきたのではないかと思います。

歴史、文化、芸術、食という「伝えたい日本のよいもの」がぎゅっとつまった玉手箱のようなまち、東銀座は歩けば歩くほど面白い場所です。次回の後篇では、お隣の築地までお散歩してみましょう。


(※1)オープン当初からジョン・レノン、オノ・ヨーコ夫妻が訪れていたことで有名な喫茶店。店内には二人の直筆サインが飾られている。

(※2)歌舞伎座が位置するエリアの昔の町名。今でも「木挽町通り」など面影が残っている。

【その他・紹介したお店情報】

のだ くみこ
埼玉県出身、築地在住。自称「日本一築地を愛する女」。東京の中心地でありながら、粋と人情が残る築地はパワースポット、として2018年より活動開始。オリジナルの築地ツアーの開催は通算100回を超え、全国に築地ファンの輪を広げ続けている。
OL時代に、米国公認会計士の資格を取得。国内最大手の会計事務所を経て、外資系企業数社にて財務会計のプロとして従事。一方で、算命学鑑定士、カウンセラーとしての顔を持つ。日本語・英語を駆使し、築地を起点に和文化体験イベントの企画運営、日本の文化を国内外に伝えることをミッションとして掲げている。

のだくみこ プロフィール

『築地スタイル 人生をきらめかせる愛と粋の流儀』
著者:のだくみこ
出版社:かざひの文庫
発売日:2023年03月21日
価格:1,500円+税

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