東銀座と私/「木挽町よしや」3代目 斉藤大地(後篇)

東銀座と私/「木挽町よしや」3代目 斉藤大地(後篇)

2023.10.25
東銀座と私
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今と昔を結ぶまち、東銀座。まちや風景は変わってもそこで過ごした時間やかけがえのない経験はいつまでも心に残り続ける―
東銀座にゆかりのある方々に東銀座や銀座、築地などを含め、このエリアで過ごした想い出やこれから期待することなどを文や絵など形態にとらわれず、前篇・後篇として2回にわたり自由に綴っていただくエッセー企画「東銀座と私」。
その第4弾となる今回は、創業1922年、数多くの著名人からも愛される老舗和菓子屋「木挽町よしや」三代目・斉藤大地さんにご寄稿いただきました。後篇では、斉藤さん発案の「銀座もの繋ぎプロジェクト」のほか、このエリアをより多くの方々に知っていただくために立ち上げたWEBメディアについてなど、まちへの熱い思いを語っていただきました。

「木挽町よしや」三代目・斉藤大地

「物々交換」は下町エリアならではの日常風景である。
2020年4月、銀座3丁目にある銀座 煉瓦亭のご主人が、名物のカツサンドを差し入れしてくれた。お返しに当店のどら焼きをお渡しする。

東銀座の洋食の名店「銀座 煉瓦亭」
一度食べたら病みつきになる、名物カツサンドウィッチ

すぐに熱々のカツサンドを写真に撮影しSNSで発信すると…
沢山の「いいね」や「どこのカツサンド?美味しそう!」「持ち帰りできるの?」などの反応があった。
そこで、2020年コロナ禍で発案したのが「銀座もの繋ぎプロジェクト」である。

銀座のまちの皆さんとリレー方式で「物々交換」をしながら、その交換したものをSNSで紹介。コロナ禍が収束した際、そのお店に足を運ぶキッカケになればと思いスタートしたプロジェクトである。私が1つ目のお店のイチ推し商品を2つ目のお店へ持っていく。2つ目のお店はその商品を受け取り、今度は自身のお店のイチ推し商品を3つ目のお店へ持っていくという具合だ。
今まで手にする機会がなかった商品を受け取ることで、新たな発見や繋がりが生まれ、まちが活性化するという言わば現代版『わらしべ長者』である。

歌舞伎座も真っ先にプロジェクトに賛同してくれた。交換の時、私が持っていたのは、すき焼きの銘店「銀座吉澤」の商品。
それを歌舞伎座にお渡しし、松竹の歌舞伎を応援するアンバサダーの「かぶきにゃんたろう」のぬいぐるみをいただいた。交換式を木挽町広場で開催し、多くのメディアの方々が取材に来てくれたことは、コロナ禍で暗かった銀座に明るい兆しが見えた瞬間だった。

歌舞伎座様との物々交換の様子

2020年8月までの約4ヶ月間で100件のお店、会社、個人の方々と交換させていただき、参加した全社のロゴ入りTシャツをUNIQLO TOKYOで販売し、その収益は銀座のまちがコロナ禍以前よりも輝けるまちとなるよう全額寄付させていただいている。
そのTシャツは現在も販売中である。(※1)

お店や企業のロゴが詰まった
銀座好きには堪らないTシャツです

コロナが収束するまでと思い、始めたこのプロジェクトは、2021年に101回目を迎えた。101回目は、銀座出身で演出家の宮本亞門さんに参加していただき「銀座ものひと繋ぎプロジェクト」としてパワーアップ。ものからひとへ、銀座にゆかりのある方々から銀座への想いやエールをいただき映像に記録することにした。
歌舞伎俳優の片岡愛之助丈、尾上松也丈、新派からは、水谷八重子さん、波乃久里子さん、という著名な方々からもエールをもらった。

銀座を愛する皆様からの温かいメッセージ
銀座ものひと繋ぎプロジェクト

東銀座の小さな和菓子屋の私が、コロナ禍で元気がなくなった銀座のまちを明るくしたいと願い始めた「銀座ものひと繋ぎプロジェクト」は、銀座を愛するたくさんの方々に応援していただき、小さな輪が大きな輪となり広がった。さらにまちの垣根を越え、日本橋やその他の地域へと繋がり続けている。(※2)

コロナ禍が収束に向かっている現在、東銀座を含め銀座に一度も来たことがない方や、「高級だからなかなか行けない。」と悩んでいる方に向けて、銀座をより身近に感じてもらうため、2022年9月に「ギンザプロデュース24」というWEBメディアを立ち上げた。

銀座で商いをしている編集部員が顔出しをしながら、銀座の情報を日々発信。
忖度のない記事が話題を呼び、近年稀にみる情報通メディアとして成長を続けている。
私が幼少期から通いなれた東銀座にある代表的なスポット「歌舞伎座」を身近に感じてもらい、幅広い年齢層の方々に足を運んでもらえるよう発信していきたいと考えている。
「銀座ものひと繋ぎプロジェクト」、「ギンザプロデュース24」は、今後、銀座の要となる最も注目してもらいたいコンテンツである。

何かが起きた時は、手と手を取り合い助け合う。
人の顔が分かるまち。そんなまちは、どんな困難なことがあっても必ず乗り越えることができる。
そして、これからも伝統を守りながら革新を続けていけるまちだろう。

そんな、東銀座が私は大好きだ。


(※1)UNIQLO TOKYO、ユニクロ銀座店での店舗限定販売。オンラインショップでは取り扱っていないためご注意下さい。
(※2)「日本橋もの繋ぎプロジェクト」2021年11月にYouTubeチャンネルがスタート。

日本橋もの繋ぎプロジェクト

斉藤 大地
東京都中央区銀座生まれ。大学卒業後の2008年より「木挽町よしや」に入社。新型コロナウィルス感染症の流行が影響し、多くの飲食店や企業が経営難に陥る中で、老舗店舗の閉店などをきかっけに、この苦境をまちの絆で乗り越えようと「銀座もの繋ぎプロジェクト」を発案。店舗、企業がそれぞれの自社商品を物々交換しながらまちの魅力を発信するという内容で、2020年4月からプロジェクトの代表を務めている。現在は、『銀座ものひと繋ぎプロジェクト』として進行中である。WEBメディア「ギンザプロデュース24」を立ち上げ、編集長としても活動中。

ギンザプロデュース24

木挽町よしや
1922年創業、歌舞伎座の路地裏に位置し、約100年以上の歴史をもつ老舗和菓子屋。先代の味と技術を守り、煉切で作る手のひらサイズの花ずし、果物かごなどの創作和菓子が名物。生地からすべて手作りし、朝から焼き上げるどら焼きは、しっとりとした皮と、最高級北海道十勝産小豆を使用した、甘さ控えめの餡が特長。オリジナルの焼印は、企業の記念品や結婚式などのお祝い事など、さまざまなシーンで使用が可能。

木挽町よしや 公式HP