歴史ある街で生きるということ。/ 築地町自治会長・江間正昭会長

歴史ある街で生きるということ。/ 築地町自治会長・江間正昭会長

2021.12.02
東銀座の人
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今と昔をつなぐ街、東銀座。その中でも、武家地として発展し、都民の食文化を支えてきた築地は、その歴史と伝統を守り、発展させていく上で欠かせない場所のひとつである。今回は、築地で生まれ育ち、この街を長年見続けてきた築地町自治会長、江間正昭会長にご登場いただき、江間会長にとっての東銀座と、街との関わり合いについてお話をお聞きした。

江間会長はこの街との縁はいつ頃からですか?

築地で生まれ、築地で育ちました。本願寺のそばにある幼稚園に通っていたんですが、当時は通園路にパン屋『木村屋』の工場があったんです。その前を通るとパンのいい香りがしてきて、たまらなかったですね(笑)。時々、お袋がお昼ご飯として工場でパンを買ってくれたことは今でも鮮明に覚えています。コッペパンかジャムパン、ピーナッツバターもあったなあ。いい思い出ですね。

「木村屋」の工場があったとは驚きです。幼少期は東銀座がどんな街だったか覚えていますか?

当時はアメリカ軍人が街にたくさんいました。接収されている場所がたくさんあったのですが、その中でも『聖路加病院』は、1番高い建物だったので東銀座・築地のランドマークのような存在だったんですよ。周りが芝生になっていたので、子供たちにとっては絶好の遊び場で、よく相撲をとりましたね。僕が小学生になった頃、日本人も『聖路加病院』で治療が受けられるようになったのだと思います。相撲で骨折した友人が最上階の病室にいて。お見舞いで行ったときにそこから街を見たときは感動したなぁ。東銀座のエリアは、僕たちにとって庭先みたいなものだったので、街中でやんちゃなことばかりしていたと思います。

やんちゃなこと?

『本願寺』で野球をしていたんですよね。しかも本気で(笑)。

本気で!今の街の様子では考えられません。

ですよね。埋め立てられてしまったけれど、本願寺脇にも築地川という川が流れていたんですよ。『築地川銀座公園』っていうのも、川があった場所だからその名前がついたんですよね。

そこから名前が来ていたとは驚きです。そうなると、街の景色はかなり変化しているのでしょうか?

していますね。戦後、東銀座と言えば「料亭が軒を連ねている街」というイメージだったと思います。今残っているのは『新喜楽』や『金田中』くらいじゃないかなあ。

日本三大料亭と言われているお店ですね。

そうです。先ほども言ったように、築地川が埋め立てられたことも街の変化の大きな部分を占めていると思います。当時は船着き場に運搬船が止まっていたり、夏になると隅田川の花火大会の日に築地川から出る船があったり。僕は乗れなかったんですけどね、憧れていましたよ(笑)。

その当時から現在まで、街の中で変わらないものはありますか?

街はガラッと変わってしまったけれど、あえて言えば『本願寺』だけは変わらずそこにいてくれている、という感じがします。子供の頃からの思い出が詰まっていますね。

江間会長だけでなく、多くの人にとって思い出の場所にもなっていると思います。江間会長はいつから自治会に関わっているんですか?

関わるようになったのは28歳からですね。同年に喫茶店『EMA』を始めてからです。

喫茶店…!

コーヒーが好きで始めたんです。8時から20時までの営業で、メニューはコーヒーのみ。ドリップコーヒーと水出しコーヒーを提供していました。56歳でやめたので、28年間やっていましたね。

長く愛されていたんですね。常連さんも結構いましたか?

そうですね。常連さんのためにコーヒーカップをお店にキープしたり。もちろん、朝の時間は特に銀座で働くサラリーマンが飛び込みでやって来ることも多かったですよ。

お店にマイカップを置いてくれるとは、珍しいですね。自治会ではどんな仕事をされてきましたか?

青年部として地域間のコミュニケーションを増やす活動をしていました。あとは、中央区の公式テニス連盟の立ち上げとボウリング連盟の立ち上げにも関わりましたね。

会長になられたのはいつごろですか?

69歳のときです。今年で5年目かな。

5年間、会長として地域を見守って行く中で地域の方達とはどんなコミュニケーションをとっていますか?

この時代、人との繋がりを作るのは難しい部分もあって。直接コミュニケーションをとるというよりは、例えば小学校と関わり合って、そこに通う子供たちにとっていかに学びやすい環境を作るか、という働きなどをしています。

とても素敵なことだと思います。いろいろと変化を遂げてきた東銀座ですが、今後はどんな街になってほしいと思いますか?

東京の歴史は江戸から始まっていて、その中でも東銀座は長い歴史を持つ場所だと思うんです。学校で子供たちに歴史を教えるのも大切だけど、まずはここにいる大人がその歴史を知って欲しいと思います。自分たちも歴史の一部にいるわけだから、未来だけを見るんじゃなくて、過去も振り返ってみることが大切。そのうえで、良い変化を遂げてくれたら嬉しいです。

文:長谷川希 写真:トコナミレイナ